3日目:「人口減少のメカニズム」「人口減少を歯止めする地域・企業」

3日目:講義「人口減少のメカニズム」「人口減少を歯止めする地域・企業」(8月24日開催)

今日の講義のポイント

熊本大学 研究開発戦略本部 地域連携UA 長谷部 大輔 氏

現在の日本は、どこの地域でも人口減少の問題を抱えています。人口減少によって、空き家、空き店舗、担い手不足などの地域課題が生まれています。人口の減少が問題視される理由として、減少によって多少のメリットが生まれる可能性はあるものの、総じて地域課題が発生するという関係にあることが挙げられます。

そこで今日の講義のポイントとして、以下の3つを考えながら聞いてください。

●人口減少という課題を自分ごととして考える
●人口減少のメカニズムを理解する
●若者が帰ってきたい阿蘇を考える

塾生の皆さんには、次の3点を意識してこれからの講義やディスカッションに臨んでください。

  1. 何をすれば自分の企業が生き残れるか? 社内起業(≒新分野進出)できるか?
  2. 自社の強み、自身の特技は何か?
  3. 自社のある地域のことを知る(立地・自然環境など)

講義:「人口減少のメカニズム」「人口減少を歯止めする地域・企業」

熊本大学 副学長/共創学環長 金岡 省吾 教授

今日は、新たな地域づくりと企業と地域の新たな関係、「人口減少のメカニズムと地方創生」についてお話しします。話の内容はとても難しいですが、今後の講義においても大切なことです。

熊本の高校生に卒業後どこで活躍したいかと尋ねると、「地元で」と答える人は5%ほどで、最も多いのは福岡で45%ほどになります。実は、大阪や東京よりも福岡の方が多いのです。地方の企業では後継者不足などの課題もあり、高校生に対して地元に残った方がいいと話す人が少ないことも原因と考えられます。

私は、はじめランドスケープや環境デザインなどを学び、その後シンクタンクで地域づくりや消費者行動、都市計画などの理論を学びました。しかし、理論だけでは実際に動かないということを実感し、平成18年に富山大学で企業が地域課題を解決していくCSV・地域ビジネスといったことに対して取り組みました。その後、熊本大学へ着任し現在に至っています。今まで共に活動をしてきた方の中には、ビジネスで地域課題を解決する「ローカルイノベーターの卵」と呼べる存在がおり、クールな大人がたくさんいました。

未来創造塾を始める当初、阿蘇の理事長・事務局長は「地域課題を解決して地域でイノベーションを起こし、進学や就職で阿蘇を離れる子どもたちに帰ってきてもらえるような環境を作り、ずっと住み続けられる地域を創っていきたい」という思いを持っておられました。

この内容を、塾生及び事務局の皆さんが一緒に考えていくということが重要なテーマだと思います。

未来創造塾が育む、地域と企業の未来の関係

●ローカルイノベーターの卵が地域を救う
●スタートはスモールプロジェクトが大事

今日の講義の2つのポイントは以下の通りです。

  1. 地方創生とはなんだろう? 人口減少のメカニズムとは?
  2. 高校生や大学生の意識変化を知る

今日の講義では、市町村単位の年齢別人口推移のグラフが沢山登場します。このグラフを見て自分で説明できるようになること、そしてそれを自社の戦略にどう関連づけていくかが重要です。

地方創生という言葉をよく耳にするようになっていますが、実は、大企業を含めて企業では、地方創生に力を入れてきており、若者も注目しはじめています。

ところで、地方創生について説明できる人はいますか?

地方創生は、地域を元気にするということが間違いではないのですが、もう少し掘り下げてみます。

人口が少なくなることで地域の担い手が減少し、さらには地域経済も縮小します。最終的に地域の魅力や活力が損なわれ、生活サービスすら維持できなくなってしまうかもしれません。こうなってしまうと、住んでいる人も他の地域へ出ていくなど、負の連鎖がはじまってしまいます。この負の連鎖を止めようということが、地方創生の大きな目的でもあるのです。

人口減少のメカニズム

人口が減少するメカニズムについて考えていただきたいと思います。

まず、日本の人口が増えると思う人はいますか? 熊本県の人口はどうでしょうか? 熊本市の人口は? 今みなさんが住んでいる自治体の人口は? 近隣で人口が増えると思われる自治体がありますか? その理由はなんでしょうか?

実際に増えるかどうかは、RESAS(地域経済分析システム)というWebサイトで調べることが可能です。RESASのデータを見てみると、熊本県の人口は減少していく予測となっています。九州地域の人口増減をみると、増加する地域は熊本県内ではTSMCなどの半導体工場の付近、そして福岡県の都市部のみで、他の地域は減少予測となっています。

なぜ、このように地域から人口が減少するのかというと、先ほどのRESASの人口社会増減のデータをみるとわかります。

15〜19歳、さらに20〜24歳の年代で地域から外へ出ていく人が多数いる地域が多いことがわかります。つまり、進学や就職で地域を離れる人が多いからです。

以前は、就職や進学で地域を離れた人が30歳代、40歳代になって再び地域に戻ってくるケースが多かったのですが、近年は戻ってくるどころか、30歳代でも地域を離れる人がいる地域も現れてきています。このように見てみると、人口減少には進学、就職、結婚などの理由が大きく関わっていると考えられます。

このRESASのデータを使って、自分たちの住む自治体の人口の社会増減がどうなっているのか考えてみてください。なかには、15歳〜19歳の人口が増えている自治体もあります。そこにはどんな社会構造があるのか、何が要因なのか考えてみることで、より地域のことを深く知ることができ、何かのヒントになるかもしれません。

人口減少のもう一つの要因として、出生率の低下も挙げられます。しかし、東京の出生率と比べると、九州各県ではそれほど低い数値とは思えません。こう考えると、先ほどの進学や就職で地域から出て行ってしまうことが、最も大きな人口減少の要因ではないかと考えられます。

若者の意識の変容と塾生の変化

和歌山県田辺市「たなべ未来創造塾」修了生の岡本さんは、農家として問題となっている鳥獣害の被害を減らすために、若手農家で集まり狩猟免許を取得して、鳥獣害被害という地域課題に向き合いました。その後、捕らえたシカやイノシシをジビエとして販売できるよう加工施設を立ち上げ、ジビエ食材の提供をはじめました。その活動の影響もあり、地元出身の有名なジビエ料理のシェフが田辺に戻りレストランを開業するなど、岡本さんが取り組んだ地域課題は、今では地域資源へと移り変わってきています。

こういった岡本さんのような取組みを地域の人が見て、人を惹きつけるという循環が生まれてきています。そして、地域の人だけでなく、都会の人や企業、さらには海外からも着目されるようになります。岡本さんのような取組みを子どもたちが見たり関わったりすることで、将来地元に帰って仕事をしたいと思うようになると、人口減少に歯止めをかけることができるのです。

人が地域に戻ってくるようになると、仕事が必要になります。岡本さんは、地域の担い手不足を補う人材として彼らを迎え入れたり、生産した農産物を使った6次産業を展開したりするなどの活動も行っています。新たな地域課題に常に取り組んでいる姿が、さらに人を呼んでいるのです。

若者の意識はどう変わるのか?

岡本さんの活動を大学の講義で学生に話すと、今まで地元には何もないと思っていた学生から「面白い」「地域を盛り上げるビジネスに関わってみたい」という声が聞こえてきます。このように、地域で課題を解決する人に対して、学生たちは興味を持ってくれています。 同様に高校生においても、地域課題を解決している人は「クール」だという認識が広まっており、高校の先生たちも、自分自身がクールな大人になり生徒たちの見本となるべきだと言い始めています。

現在、熊本県内の高校生にも地域課題を解決している人の話を聞くことができる機会を作っています。大学においても授業の内容が変わってきており、熊本だけではなく全国や世界の大学で地域課題を解決するコースが開設されてきています。熊本大学でも共創学環を開設することになり、学生だけでなく保護者の方にも興味を持ってもらっています。

ここで再び、先ほどの人口減少のグラフを見てください。これまで地域からなぜ人が減っていたのか、何が起こっているのかを頭の片隅におき、これから半年間講義を聞きながら自分のビジネスとどう関係づけていくのか考えていただきたいと思います。就職や進学で阿蘇を離れた子どもたちが、将来地元に関与してくれるには、ローカルイノベーターの卵たちのような「かっこいい大人の背中」が重要なのです。

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