今日は、新たな地域づくりと企業と地域の新たな関係、「人口減少のメカニズムと地方創生」についてお話しします。話の内容はとても難しいですが、今後の講義においても大切なことです。
熊本の高校生に卒業後どこで活躍したいかと尋ねると、「地元で」と答える人は5%ほどで、最も多いのは福岡で45%ほどになります。実は、大阪や東京よりも福岡の方が多いのです。地方の企業では後継者不足などの課題もあり、高校生に対して地元に残った方がいいと話す人が少ないことも原因と考えられます。
私は、はじめランドスケープや環境デザインなどを学び、その後シンクタンクで地域づくりや消費者行動、都市計画などの理論を学びました。しかし、理論だけでは実際に動かないということを実感し、平成18年に富山大学で企業が地域課題を解決していくCSV・地域ビジネスといったことに対して取り組みました。その後、熊本大学へ着任し現在に至っています。今まで共に活動をしてきた方の中には、ビジネスで地域課題を解決する「ローカルイノベーターの卵」と呼べる存在がおり、クールな大人がたくさんいました。
未来創造塾を始める当初、阿蘇の理事長・事務局長は「地域課題を解決して地域でイノベーションを起こし、進学や就職で阿蘇を離れる子どもたちに帰ってきてもらえるような環境を作り、ずっと住み続けられる地域を創っていきたい」という思いを持っておられました。
この内容を、塾生及び事務局の皆さんが一緒に考えていくということが重要なテーマだと思います。
未来創造塾が育む、地域と企業の未来の関係
●ローカルイノベーターの卵が地域を救う
●スタートはスモールプロジェクトが大事
今日の講義の2つのポイントは以下の通りです。
- 地方創生とはなんだろう? 人口減少のメカニズムとは?
- 高校生や大学生の意識変化を知る
今日の講義では、市町村単位の年齢別人口推移のグラフが沢山登場します。このグラフを見て自分で説明できるようになること、そしてそれを自社の戦略にどう関連づけていくかが重要です。
地方創生という言葉をよく耳にするようになっていますが、実は、大企業を含めて企業では、地方創生に力を入れてきており、若者も注目しはじめています。
ところで、地方創生について説明できる人はいますか?
地方創生は、地域を元気にするということが間違いではないのですが、もう少し掘り下げてみます。
人口が少なくなることで地域の担い手が減少し、さらには地域経済も縮小します。最終的に地域の魅力や活力が損なわれ、生活サービスすら維持できなくなってしまうかもしれません。こうなってしまうと、住んでいる人も他の地域へ出ていくなど、負の連鎖がはじまってしまいます。この負の連鎖を止めようということが、地方創生の大きな目的でもあるのです。
人口減少のメカニズム
人口が減少するメカニズムについて考えていただきたいと思います。
まず、日本の人口が増えると思う人はいますか? 熊本県の人口はどうでしょうか? 熊本市の人口は? 今みなさんが住んでいる自治体の人口は? 近隣で人口が増えると思われる自治体がありますか? その理由はなんでしょうか?
実際に増えるかどうかは、RESAS(地域経済分析システム)というWebサイトで調べることが可能です。RESASのデータを見てみると、熊本県の人口は減少していく予測となっています。九州地域の人口増減をみると、増加する地域は熊本県内ではTSMCなどの半導体工場の付近、そして福岡県の都市部のみで、他の地域は減少予測となっています。
なぜ、このように地域から人口が減少するのかというと、先ほどのRESASの人口社会増減のデータをみるとわかります。
15〜19歳、さらに20〜24歳の年代で地域から外へ出ていく人が多数いる地域が多いことがわかります。つまり、進学や就職で地域を離れる人が多いからです。
以前は、就職や進学で地域を離れた人が30歳代、40歳代になって再び地域に戻ってくるケースが多かったのですが、近年は戻ってくるどころか、30歳代でも地域を離れる人がいる地域も現れてきています。このように見てみると、人口減少には進学、就職、結婚などの理由が大きく関わっていると考えられます。
このRESASのデータを使って、自分たちの住む自治体の人口の社会増減がどうなっているのか考えてみてください。なかには、15歳〜19歳の人口が増えている自治体もあります。そこにはどんな社会構造があるのか、何が要因なのか考えてみることで、より地域のことを深く知ることができ、何かのヒントになるかもしれません。
人口減少のもう一つの要因として、出生率の低下も挙げられます。しかし、東京の出生率と比べると、九州各県ではそれほど低い数値とは思えません。こう考えると、先ほどの進学や就職で地域から出て行ってしまうことが、最も大きな人口減少の要因ではないかと考えられます。