熊本大学の金岡副学長による本講義は、「人口減少のメカニズムと地方創生」をテーマに、地域と企業の新たなあり方を提示するものです。
まず、高校生への調査から、若者の多くが地元ではなく福岡や東京などの都市部へ流出する現状を指摘。この流出が、中小企業の事業承継難や地域サービスの崩壊を招き、さらなる魅力低下を呼ぶ「負の連鎖」を生んでいると解説しています。地方創生の真の目的は、単なる活性化ではなく、この負の連鎖を食い止めることにあります。
データ分析(RESAS)に基づき、人口減少の主因は進学・就職時の「社会移動」にあり、地域の真のライバルは東京だけでなく、福岡や熊本市といった「地方中枢都市」である実態を明らかにしました。
講義の核となるのは、地域課題をビジネスで解決する「ローカルイノベーター」の育成です。「阿蘇未来創造塾」等の活動を通じ、大きな事業よりも「スモールプロジェクト」を積み重ね、若者が「帰ってきたい」と思える環境を共創する重要性を説いています。受講生には、提示された図解を基に自地域の現状を深く理解し、主体的な対話を通じて解決策を探ることが求められています。
地方では「仕事がない」と言われる一方で、企業は人手不足に悩んでおり、両者のミスマッチが課題となっている。
高垣工務店はこの課題に対し、地域との関係性を軸に解決を図った事例である。社長の石山氏は、顧客に寄り添う姿勢で会社を再建し、住宅事業に加えてデイサービスや放課後デイサービスなど、顧客の困りごとに応じた事業を展開した。さらに、空き倉庫を改装した無料の交流拠点「シリコンバー」を設け、地域住民や若者が集まる場を創出した。この取り組みにより企業の認知や信頼が高まり、結果として売上向上につながった。
また、地域活動に共感した若者が都市部からも集まり、人材確保にも成功している。石山氏は、給与などの「働きやすさ」だけでなく、地域と関わる「働きがい」が重要だと指摘する。地方には仕事がないのではなく、魅力的に見えていないだけであり、地域との関係性を活かすことで「面白い仕事」は創出できると示している。