1日目:オリエンテーション

1日目:オリエンテーション(7月10日開催)

主催者あいさつ

公益財団法人 阿蘇地域振興デザインセンター事務局長 田端文一

本日はお忙しい中、オリエンテーションにご参加いただきありがとうございます。
「阿蘇未来創造塾」は熊本大学との共催により、地域課題の解決とビジネスの両立、そして阿蘇地域の未来を担う人材育成を目的として開催しています。令和3年度に始まり、今年で第5期となります。

阿蘇地域は豊かな自然に恵まれる一方で、少子高齢化や人口減少などの課題も抱えています。本塾では講義やワークを通じて意見交換を行い、新たな地域の魅力づくりにつなげていただきたいと考えています。あわせて、参加者同士のネットワークづくりも大きな価値になると期待しています。

8か月間の長いプログラムとなりますが、事務局として全力でサポートしてまいりますので、積極的に交流しながら取り組んでいただければと思います。最後に、本塾の運営にあたりご支援をいただいている熊本大学や金融機関の皆様に心より感謝申し上げます。

導入講義「あそ未来創造塾」イメージの共有

公益財団法人阿蘇地域振興デザインセンター 渡邉事務局員

  • 何をすれば自社が生き残れるか
  • 自社の強み、自身の特技は何か
  • 自社のある地域のことを知る

これらを常に意識して、講義やディスカッションに臨んでいただきたい。また、気づきや興味を逃さないよう、徹底した「メモの取得」を推奨しました。

日本社会は、高度経済成長期の「人口増加・大量消費・行政主導のハード整備」の時代から、2010年をピークとした「人口減少・低成長・ソフト重視」の時代へと転換しています。自治体の税収減に伴い、公的資金のみでは地域課題を解決できない現状において、民間企業がビジネスを通じて課題解決を図るCSV戦略が不可欠となっています。あそ来創造塾では、半年間のカリキュラムを通じて、塾生が自社の強みを再発見し、人口減少が進む阿蘇地域の具体的な課題(自然減・社会減・産業衰退等)に即したスモールビジネスを創出することを目指しています。最終的には、地域と企業がWIN-WINの関係を築き、持続可能な地域経済の循環を生み出すことが本塾の目標です。

塾生自己紹介

塾生それそれが企業情報や事業内容を説明し、なぜ未来創造塾に参加したのか、これまで取り組んできたことについて発表し、互いの情報やこれからの目標について共有しました。

講義 「地域活性化論Ⅰ」

講師 熊本大学研究開発戦略本部 客員教授 鍋屋安則 氏

鍋屋氏は和歌山県田辺市の出身で、熊本大学の客員教授ですが、地元田辺市役所の職員でもあります。2016年田辺市でたなべ未来創造塾を立ち上げ、その未来創造塾は、現在熊本県内6箇所に広がっています。その塾をサポートするために、熊本大学で教授をしながら田辺市で公務員もしてるというそんな働き方に挑戦されている方です。


1.未来創造塾の基本理念と対話のルール
未来塾の進め方:未来創造塾は、前半で講義を受け、後半は参加者同士の対話を通じて学びを深める形式で進めています。
討論のように意見を戦わせるのではなく、互いの考えを尊重しながら対話を重ね、一緒に考えを深めていくスタイルが特徴です。対話のルールとして以下のことを話されました。

  • ●耳を済ませて聞く: 相手の言葉に真摯に耳を傾ける。
  • ●否定も断定もしない: 正解は一つではなく、多様な考えを認める。
  • ●アイデアを繋げる: 他者の意見から新たな発想を得る。
  • ●心の変容を許す: 他者の意見を聞いて自分の考えが変わることを素晴らしいことと認める。
  • ●共創の場: 異なる職種の人々が交流することで科学反応を起こし、新しい価値を生み出す。

 

2.未来創造塾のテーマ

地域課題をビジネスで解決することがこの塾のテーマで、地域の課題がビジネスチャンスになること、「共創の場」が化学反応を起こすことが大事ということでした。
地域課題が新たな価値を生み出す

これまでの「儲け重視のビジネス」と「ボランティア(NPO)」の間にあった空白地帯が、これからの主戦場(ブルーオーシャン)になります。

  • ●CSV(Creating Shared Value): 地域の課題解決と企業の経済成長を両立させる。
  • ●新しい資本主義: 国の計画でも「社会的課題解決と経済成長」がセットで語られており、時代の大きな潮流となっている。
  • ●デジタル×地域課題: デジタル活用と共に、地域課題の解決が日本経済のもう一つの軸になる。

「共創」の場が化学反応を起こす
壮大なビジネスである必要はありません。多様な「小さなビジネス」が地域内でつながり、循環することが重要である。


3.地域課題解決の事例紹介(たなべ未来創造塾)

本業に地域課題を掛け合わせることで、独自のコンセプト(パーパス)を確立し、共感を生むマーケティングが可能になる。

【家具×虫食い材】(榎本将明さん):
安価で廃棄される「あかね材の虫食い材」にストーリーを付加。
「BokuMoku(ボクモク)プロジェクト」としてワークショップや企業向け販売を展開し、企業イメージ向上と本業の売上増を達成。

【農業×獣害対策×ジビエ】(岡本和宜さん、更井亮介さん):
獣害を「奪った命の活用」と捉え、食肉加工場を設立。
更井亮介さん(ミシュラン掲載シェフ)との連携により、地域循環型のレストランを実現。

【鰻×梅干し】(太田有哉さん):
「食べ合わせが悪い」という迷信を逆手に取り、規格外の梅を活用した新商品を開発。
廃棄物の肥料化など循環型モデルを構築し、ブランド価値を再定義。

 

4. 少子化・育児問題への「共助」のアプローチ

現在の出生率(1.15)は人口維持に必要な水準を大きく下回っています。その背景にある「経済的理由」と「育児ストレス」を解決するため、行政(公助)や個人(自助)だけに頼らない**「共助(地域で助け合う仕組み)」**の重要性が語られました。

事例:子育てシェアアプリ「AsuMama(子育てシェア)」
支援を受けたい人と送迎・託児ができる人をマッチング。
手数料を無料にすることでママ同士のコミュニティを形成し、企業や行政からの委託・広告収入でマネタイズするモデル。

イタリアンシェフ・土井隆司さんの挑戦:たなべ未来創造塾5期生
空き家と隣接する公園を活用し、1階を飲食店、2階をキッズスペースにした「ママが気兼ねなく過ごせるサードプレイス」を創出。
公園でのマルシェ開催を通じて、ママたちのコミュニティと小さな経済循環を生んでいる。

FP(ファイナンシャルプランナー)小山葵さんによる託児所開設:たなべ未来創造塾5期生
ママの就労支援が世帯年収を上げ、将来的な住宅購入(本業の顧客)に繋がるという循環を設計。
「子供たちが作るかき氷(体験型)」が12万円も売れるなど、コンセプトの力で地域を巻き込んでいる。

グループディスカッション

熊本大学の鍋屋さん、熊本県信用保証協会保証部保証事務課の三宅課長代理にもご参加いただき、「成功事例だけではなく、失敗事例も知りたい」「個人の課題が地域課題とつながり、横のつながりができる場が未来創造塾であることが理解できた」といった感想が寄せられました。

また、「協力者をつくり、継続していくことが大切である」「最初の一歩はお金もかかり勇気も必要で、なかなか踏み出せないものだが、失敗しながらでも進むことが大切。やってみないと分からない」といった意見も発表されました。

さらに、「子育てコミュニティは収益化が難しい」「子どもたちが大人と接する機会を増やしていく必要がある」「高校生だけでなく、小学生や中学生にも地域課題があることを知ってもらうことが非常に大事ではないか」といった意見もありました。

その後、次回開講式に関する事務連絡が行われ、オリエンテーション終了後にはコーヒータイムも設けられ、塾生同士の交流が深められました。

協力機関・協力団体

  • 株式会社日本政策金融公庫 熊本支店
  • 熊本県信用保証協会
  • 肥後銀行 宮地支店

後援団体

  • 九州財務局
  • 熊本県八代市・天草市・玉名市・菊池市
  • 和歌山県田辺市
  • 富山県南砺市
  • 株式会社熊本銀行 阿蘇支店
  • 熊本県信用組合 高森支店
  • 阿蘇市商工会
  • JA阿蘇