鍋屋氏は和歌山県田辺市の出身で、熊本大学の客員教授ですが、地元田辺市役所の職員でもあります。2016年田辺市でたなべ未来創造塾を立ち上げ、その未来創造塾は、現在熊本県内6箇所に広がっています。その塾をサポートするために、熊本大学で教授をしながら田辺市で公務員もしてるというそんな働き方に挑戦されている方です。
1.未来創造塾の基本理念と対話のルール
未来塾の進め方:未来創造塾は、前半で講義を受け、後半は参加者同士の対話を通じて学びを深める形式で進めています。
討論のように意見を戦わせるのではなく、互いの考えを尊重しながら対話を重ね、一緒に考えを深めていくスタイルが特徴です。対話のルールとして以下のことを話されました。
- ●耳を済ませて聞く: 相手の言葉に真摯に耳を傾ける。
- ●否定も断定もしない: 正解は一つではなく、多様な考えを認める。
- ●アイデアを繋げる: 他者の意見から新たな発想を得る。
- ●心の変容を許す: 他者の意見を聞いて自分の考えが変わることを素晴らしいことと認める。
- ●共創の場: 異なる職種の人々が交流することで科学反応を起こし、新しい価値を生み出す。
2.未来創造塾のテーマ
地域課題をビジネスで解決することがこの塾のテーマで、地域の課題がビジネスチャンスになること、「共創の場」が化学反応を起こすことが大事ということでした。
地域課題が新たな価値を生み出す
これまでの「儲け重視のビジネス」と「ボランティア(NPO)」の間にあった空白地帯が、これからの主戦場(ブルーオーシャン)になります。
- ●CSV(Creating Shared Value): 地域の課題解決と企業の経済成長を両立させる。
- ●新しい資本主義: 国の計画でも「社会的課題解決と経済成長」がセットで語られており、時代の大きな潮流となっている。
- ●デジタル×地域課題: デジタル活用と共に、地域課題の解決が日本経済のもう一つの軸になる。
「共創」の場が化学反応を起こす
壮大なビジネスである必要はありません。多様な「小さなビジネス」が地域内でつながり、循環することが重要である。
3.地域課題解決の事例紹介(たなべ未来創造塾)
本業に地域課題を掛け合わせることで、独自のコンセプト(パーパス)を確立し、共感を生むマーケティングが可能になる。
【家具×虫食い材】(榎本将明さん):
安価で廃棄される「あかね材の虫食い材」にストーリーを付加。
「BokuMoku(ボクモク)プロジェクト」としてワークショップや企業向け販売を展開し、企業イメージ向上と本業の売上増を達成。
【農業×獣害対策×ジビエ】(岡本和宜さん、更井亮介さん):
獣害を「奪った命の活用」と捉え、食肉加工場を設立。
更井亮介さん(ミシュラン掲載シェフ)との連携により、地域循環型のレストランを実現。
【鰻×梅干し】(太田有哉さん):
「食べ合わせが悪い」という迷信を逆手に取り、規格外の梅を活用した新商品を開発。
廃棄物の肥料化など循環型モデルを構築し、ブランド価値を再定義。
4. 少子化・育児問題への「共助」のアプローチ
現在の出生率(1.15)は人口維持に必要な水準を大きく下回っています。その背景にある「経済的理由」と「育児ストレス」を解決するため、行政(公助)や個人(自助)だけに頼らない**「共助(地域で助け合う仕組み)」**の重要性が語られました。
事例:子育てシェアアプリ「AsuMama(子育てシェア)」
支援を受けたい人と送迎・託児ができる人をマッチング。
手数料を無料にすることでママ同士のコミュニティを形成し、企業や行政からの委託・広告収入でマネタイズするモデル。
イタリアンシェフ・土井隆司さんの挑戦:たなべ未来創造塾5期生
空き家と隣接する公園を活用し、1階を飲食店、2階をキッズスペースにした「ママが気兼ねなく過ごせるサードプレイス」を創出。
公園でのマルシェ開催を通じて、ママたちのコミュニティと小さな経済循環を生んでいる。
FP(ファイナンシャルプランナー)小山葵さんによる託児所開設:たなべ未来創造塾5期生
ママの就労支援が世帯年収を上げ、将来的な住宅購入(本業の顧客)に繋がるという循環を設計。
「子供たちが作るかき氷(体験型)」が12万円も売れるなど、コンセプトの力で地域を巻き込んでいる。